毎年行っている母校愛知大学での相続税・贈与税の講師、今年も行ってきました。
今年は、他の授業の関係か、履修者が非常に少なく残念でしたが、少しでも相続税・贈与税を含めた税金や税理士に興味を持ってもらえたらいいですね。
今年は相続税に影響する民法の大きな改正がありました。
抜粋となりますが、以下のようなものがあります。
【1】配偶者の居住権の保護
(1)配偶者短期居住権 配偶者が相続開始時に遺産に属する建物に住んでいたら、遺産分割が終了するまで(最低6ケ月)無償で住める
(2)配偶者居住権 配偶者が居住していた建物を、終身又は一定期間、配偶者が住むことを認める権利を創設
【2】遺産分割等に関する見直し
(1)配偶者保護(持戻し免除の意志表示推定規定) 婚姻期間20年以上の夫婦間の居住用不動産の遺贈・贈与があったとき、持ち戻しの免除の意志があったと推定した遺産分割ができるようにする
(2)遺産分割前の払戻し制度 預貯金を、生活費・葬式費用の支払等に使えるよう、一定額まで遺産分割前に払戻しを受けられる
(3)遺産分割前に財産処分した場合の遺産の範囲 相続開始後に共同相続人の一人が財産処分した場合の計算上の不公平を是正
【3】遺言制度の見直し
(1)自筆賞与遺言の方式緩和 財産目録は自筆でなくパソコン作成・預金コピーや登記事項証明書等の添付等でOK
(2)法務局における自筆証書遺言の保管 ※
【4】遺留分制度に関する見直し
遺留分減殺請求権から生ずる権利を金銭債権化し、金銭をすぐに用意できない受遺者等の金銭債務の全部・又は一部の支払について、裁判所が期限を許与することができる
【5】 相続の効力等に関する見直し
法定相続分を超える権利承継分は、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できない
【6】相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
相続人以外の親族が被相続人の療養看護等をした場合には、一定要件のもと、相続人に対して金銭の支払いを請求できる
大きく変わったのは、配偶者に対する保護です。
【1】の居住権の保護に、【2】(1)の配偶者に贈与した居住用不動産を相続税の計算から除くという改正は、配偶者に非常に手厚くなっていますね。
また、自筆証書遺言の方式が緩和されたのも、はいい改正だと思います。
今までは、自筆証書遺言はすべてを手書きで記入する必要がありました。少しでもミスがあると遺言として無効になるため、せっかくの意思が反映されないこともありました。
公正証書遺言は無効になりにくく紛失の危険がもありませんが、費用がかかることや証人2名以上が必要なため、誰でも気軽に使える制度ではなかったので、自筆証書遺言が使いやすくなって多くの方が遺言を作成するようになるかもしれませんね。
【6】は、介護をした亡き長男の妻が、相続人である兄弟たちに金銭請求できるという制度になります。
子の配偶者は相続人ではありませんので、いくら看護等しても他人と同じ扱いだったのですが、この制度で報われることになります。
民法を改正する法律は、平成30年7月6日に成立しているのですが、施行期日は以下となります。一番早い自筆証書遺言が来年1月13日ですが、現時点の12月ではまだ施行されていませんので、ご注意を!
【1】 配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等 2020年4月1日
【3】 自筆証書遺言 2019年1月13日
【1】【3】 以外 2019年7月1日
※【3】(2)のみ 2020年7月10日